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小口 研一 個人HP
II. 2019/04 ~ 2024/03 量子増強誘導ラマン散乱顕微法
(Quantum-enhanced stimulated Raman microscopy)
Figure II-1 : Setup of Stimulated Raman scattering microscopy (IM; intensity modulator)
誘導ラマン散乱顕微法(SRS)はラマン散乱の信号を高速・高感度に計測できる手法であり、CH, OH, C=C基など生体内に存在する官能基を無標識で可視化することができ、病理診断、フローサイトメトリーなど様々な分野で応用されている。近年では、重水素やアルキン置換分子を用いて分子量の小さな生体分子を可視化する研究が注目を集めている。こうした小さな生体分子(例えばアミノ酸やドーパミンなど)は蛍光タンパク質、蛍光色素などの分子量が大きな分子で染色してしまうと生体内での応答が大きく変化してしまうため、重水素置換などを用いたSRS顕微鏡で低侵襲にイメージングすることが非常に重要である。
こうした分子量の小さな生体分子のイメージングができるようになると、生体内での神経伝達物質の輸送現象や生体ダイナミクスの解明に大いに役立つ可能性がある。しかし、その上で最大の課題はSRSイメージングの画像取得時間である。SRSイメージングにおける典型的なイメージ取得時間は1枚(1波数)あたり数秒であるが、これは脂肪組織やポリマービーズなど比較的濃度が高い試料の場合であり、生体内の典型的な濃度が~1 mM以下である生体分子の場合は1~10分オーダーのイメージング時間が必要となる。
SRSイメージングの信号雑音比(SNR)、そして画像取得時間は使用するパルス光源のショット雑音によって主に制限されている。ショット雑音はハイゼンベルクの不確定性原理に由来する雑音であり、古典物理の範囲内では、この標準量子限界を突破することはできない。